●尾道(おのみち)
坂の町として知られる尾道は別名、寺の町とも呼ばれ、名刹の千光寺をはじめとする古刹が多く存在し、風光明媚な土地柄から数々の映画のロケ地としても使用されています。千光寺山頂から望む景色は多くの文人からも愛され、尾道水道と町並み、遠くに浮かぶ瀬戸内海の島々が合わさった景色は、まさに絶景です。

<住所>
広島県尾道市
<アクセス>
新幹線では拠点となる尾道駅まで、福山駅からJR山陽本線で約20分です。広島駅からは新幹線利用で約1時間(4750円)、在来線のみだと2時間(1490円)近くかかります。岡山県側からはJR山陽本線で約1時間半(1320円)です。尚、倉敷からだと約1時間(1140円)です。他、広島空港からアクセスの場合は、尾道までのバス(820円)も発着しています。
尾道を代表する観光スポットの千光寺までは、行きはロープウェイを利用するのがオススメ。千光寺山ロープウェイ乗場までは駅から徒歩で10分程度です。
駅からバスで千光寺山ロープウェイ乗場(山麓駅)まで行かれる場合は長江口バス停を下車してください。写真は尾道駅。
駅から千光寺方面へと線路沿いを歩いていくと、右側に枝分かれするような感じで途中に商店街の入口があります。目印は『海が見える 海が見えた 五年振りに見る尾道の海は懐かしい』の小説、放浪記で知られる林芙美子の像です。
写真はその尾道本通り商店街で、千光寺へと向かう場合は、ここを通り抜けるのがオススメです。
商店街の途中にロープウェイ乗り場の案内看板があり、左手に進んで道路と線路(高架)を渡ればすぐにロープウェイ乗り場に到着します。
逆にそこから商店街を右手に進むと、尾道ラーメンの超有名店である朱華園(しゅうかえん)があります。行列が出来る有名店ですが、週末でも昼時を外せば比較的空いています。朱華園もさることながら、駅前にある尾道ラーメン たに 駅ビル店や福山駅のそばにある尾道ラーメン 一丁も個人的にオススメです。
ロープウェイで山頂まで行くと、美しいこの景色に出会えます。対岸は向島(むかいしま)になります。
展望台から見る尾道水道と市街地、そして遠くに見える島々の景色は最高で、まるで自分が一枚の絵の中にいるかのような錯覚を覚えます。ちょっと大袈裟な言い方ですけど・・・
左手を見るとこんな感じです。ちなみに千光寺山ロープウェイは山麓駅から千山頂駅まで片道320円です。往復だと500円なのですが、ここから千光寺までは文学のこみちを下っていきます。つまり往復利用する場合は再び苦しい上りが待っている上に重要文化財の天寧寺の三重塔をも見逃すこととなってしまうので、個人的にはロープウェイは片道利用をオススメします。
こちらが文学のこみち。文学のこみちには、尾道ゆかりの作家や詩人の詩歌などが刻まれた自然石があります。
文学のこみちを歩くこと数分で千光寺に到着します。寺伝によると、千光寺は平安時代初期806年に弘法大師によって開基され、後に源氏の名将、多田満仲の中興と伝えられています。
こちらが1686年に建立された本堂で、朱塗りの鮮やかな色から別名、赤堂と呼ばれています。本尊は秘仏の千手観世音菩薩となっています。舞台造りの本堂から見る尾道水道もまた絶景!展望台からの景色と同じと言えば同じなんですが。ちなみに、ロープウェイからもよく見える石の玉っころは、その昔は海上を明るく照らしていたとされる如意宝珠を模したものらしいです。
本堂を後にすると写真の場所になります。左手に坂を下れば天寧寺の三重塔を経由し、ロープウェイの山麓駅まで戻れます。右の石段は何でしょう?よく見ると、鎖で登れる石鎚山はこの上ですと書いてあります。
で、少しばかり登ってみます。この角度からの本堂もステキです。
ぬぬっ、怪しい鎖が・・・
どうやら上まで行くと当寺の鎮守でもある石鎚蔵王大権現に参拝ができるらしいです(奉納料100円)。
同じく展望台からと似たような景色ですが、個人的にはこの辺り(境内)からの景色が一番好きですね。
頑張って登ってみる。万一の事故に対しては一切の責任を負いかねますと書いてありましたが、ほんと危険です。
鎖修行を終え、何故かお墓の中を通り抜け、参道へと合流します。ひっそりと参道脇には摩崖仏なんかもあったりします。
しばらく下ると、猫の細道なんていう細い路地があります。
猫の細道には、あちこちに福石猫と呼ばれる可愛らしい置物があります。
結局、猫一匹見つかりませんでしたけど・・・
こちらも尾道の見どころの1つ、天寧寺の三重塔(海雲塔)で重要文化財にも指定されています。この海雲塔は元々は1388年に造立された五重塔であったらしく、その後に風雪により三重塔へと改築されたらしいです。さらに下ったロープウェイの山麓駅近くに本堂があります。
ロープウェイ乗り場(出発地点の山麓駅)から徒歩1分程度のところにある天寧寺本堂。天寧寺は室町幕府2代将軍の足利義詮により、1367年に建立されましたが、雷火により建造物は全て焼失し、当時から残るものは海雲塔だけとなっています。
天寧寺は三重塔が有名ですが、境内にある五百羅漢像も見どころです。殆ど人影もなく、人気のない様子でしたが・・・ こちらに安置される羅漢像は江戸〜明治時代にかけて彫られたものだそうです。
ここから尾道三名刹(千光寺、西國寺、浄土寺)と呼ばれる残りの西國寺と浄土寺を目指します。これでも案内板通りに進んでいるのですが、基本的にどこも細い路地ばかりです。
おまけに坂の町と言うだけあって、坂が多いです。ちなみに千光寺から西國寺、浄土寺まではそれほど急な坂らしいものはありませんのでご安心を。写真の石段くらいは坂のうちに入らないでしょ?・・・
千光寺から西國寺までの道中には、菅原道真公を祀る御袖天満宮(みそでてんまんぐう)があります。本殿は昭和に再建されたもの。
この角度からのこの写真、見覚えある方もいるのではないでしょうか?この御袖天満宮の石段は大林宣彦監督の転校生のロケ地となった場所なんです。主演の尾美としのりと小林聡美が転げ落ち、男女の身体が入れ替わった有名な場所なんですよ。記憶ではこの角度から見て神門手前の左側に倒れこんだような、違ったかなぁ。懐かしいです。あ、知らない方はスルーして西國寺へと向かいましょう。
西國寺に到着です。真言宗醍醐派大本山の西國寺の総本山は京都にある世界遺産にも登録されているあの醍醐寺です。1648年に建立された仁王門(山門)に掲げられる大草鞋は西國寺のシンボル的な存在です。
ほんと、大きいです。大草鞋が飾ってある寺院は全国にも幾つかありますが、ここが一番の有名どころではないでしょうか。旅の安全などを祈願し奉納されたものが由来となっているそうで、足腰に御利益があるそうですよ。言葉的には草鞋(わらじ)も草履(ぞうり)も感じが似ていますが、藁で作られていることは勿論、つまり指の固定が出来ないのが草鞋です。
本堂(金堂)までは長い石段があります・・・
時間があれば長い石段手前にある金剛院金毘羅社に立ち寄ってみましょう。
社の中を覗いてみると、ぎょえ〜!恐ろしい顔をしたカラス天狗が・・・
さらに社の後ろにまわると石顔石頭の天狗がいます。このカラス天狗、大天狗、小天狗の三天狗は、願い叶うならば軽々と、願い叶わなければ重々と、何時の日かその願いがよく当たるので、人呼んで重軽天狗と名付けられたそうです。持ち上げる前に、じっくり観察すれば軽そうな天狗を見つけられますよ。たぶんですけど・・・
こちらが金堂。西國寺の本堂ですね。西國寺はある日、尾道に立ち寄った奈良時代の高僧、行基がその夜に加茂明神の霊夢を見て、そのお告げによってこの地に開山したと言い伝えられます。度重なる火災によって、現在の建物は備後の守護山名一族によって1386年に再建されたもの。国の重要文化財にも指定されています。本尊は同じく重文の薬師瑠璃光如来坐像となっています。
ここから三重塔へと向かいます。なんか階段がまだある・・・
1429年に足利義教の寄進によって建立された三重塔です。
続いて西國寺から浄土寺へと向かいます。尾道三名刹の位置関係は地図の通りとなっています。観光案内所で聞いたところ、千光寺⇒西國寺⇒浄土寺とまわる場合は、帰りは線路に沿って商店街を抜けて駅まで戻るか、尾道水道沿いに海を見ながら戻ってくるのがオススメだそうですよ。尚、私は立ち寄りませんでしたが、海(尾道水道)近くにある、おのみち映画資料館も候補に薦められました。
浄土寺へやってきました。国宝の寺と呼ばれることだけあって期待も大きいです。山門は室町時代初期までには建立されたと思われ、国の重要文化財に指定されています。
写真が1327年に建立された国宝の本堂です。千光寺、西國寺と同じく、どれも本堂は朱色に塗られていて、これはこれでとっても美しいです。
1328年に建立の多宝塔。こちらも国宝!
本堂と多宝塔の間にある阿弥陀堂も何気に重要文化財です。1345年に建立されたものですが、浄土寺は聖徳太子の開創と伝えられ、火災による伽藍の焼失により本堂や多宝塔、山門とともに全て再建されたものとなっています。再建といっても鎌倉時代あたりですけどね・・・

尾道駅から千光寺を抜け、ここまでのルートは約3〜4時間(比較的ゆっくりで)といったところでしょうか。

●神辺本陣
神辺本陣は、江戸時代にあった備中高屋宿と備後今津宿の中間位置していた参勤交代の大名らが利用していた宿場です。神辺本陣は代々、酒造業を営み筑前黒田家の本陣役を勤めたことに始まるとされます。

<住所>
広島県福山市神辺町川北528  内部は土日祝のみ見学可。
<アクセス>
JR福塩線の神辺(かんなべ)駅から徒歩約10分です。JR福山駅からは神辺駅まで約15分、210円です。
こちらが福山駅から出ている福塩線です。ワンマン運転のローカル線に乗るのも旅の醍醐味でしょうか。
神辺本陣まで近づいてくると、歴史的価値のある建造物がゴロゴロと軒を連ねています。けれども週末でも観光客はおろか、歩いている人の姿を見かけません。
こちらが神辺本陣です。大名が宿泊した際には部屋数27、畳数200余枚を使用し50〜70人は収容可能であったそうです。現在、住宅部及び酒造関係施設の一部が消滅していますが、本陣関連施設の大部分は現存しているそうです。
訪問時は門も閉ざされていましたが、私が来ると全ての戸を開けてくれ迎えてくれました。滞在時間は10分程度だったのにも関わらず有難いです。

●廉塾・菅茶山旧宅
廉塾(れんじゅく)は1781年頃に菅茶山(かんちゃざん)が開いた私塾で、講堂・寮舎・居宅・書庫・菜園・養魚地があります。菅茶山は神辺の東本陣(酒造業)に生まれ、京都で朱子学を学び神辺に塾を開き、全国から学生が集まりました。

<住所>
広島県福山市神辺町川北640-3 見学自由。
アクセスは神辺本陣から約5分です。このあたりも宿場の名残のある古い建物がゴロゴロ建っていて、なまこ壁ファンは必見ですね。
こちらは一棟だけ残る寮舎です。ここでも地元の方々に厚いおもてなしを受けます。
菅茶山は当世随一の詩人ともいわれた漢詩人で、困窮時に備えて米麦を蓄えておく朱子社倉法を実践した社会事業家でもあったそうです。高屋川から引いた水路の水がとても綺麗です。で、その綺麗な水が気になって高屋川に寄ってみたら意外に綺麗ではなかったのには驚き・・・


広島県の観光